自分の「天才性」を見つければ、本来の自分を生きられる。山口揚平さんに聞く、人生のリデザイン

2022/01/19
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産業構造、働き方、価値観…… 私たちは今、社会が大きく変化する「うねり」の中に生きています。この変化に追い打ちをかけるように「コロナ禍」が加わり、いろんなことが行き詰まる中で、自分の人生を見つめ直す人も増えてきました。

「そもそも自分はどんなふうに生きたかったのか?」このような自問に寄り添い、本来の自分を取り戻す手助けをしているのが『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』の著者、山口揚平さん。

山口さんはその答えとして、

自分の「天才性」に気づくことができれば、生活も仕事のやり方もおのずと変わってくる

と言います。

この「天才性」という言葉、多くの人は縁遠く感じてしまうのでは……? しかし、山口さんはそうではないと断言します。今こそ大切な「天才性」とはどのようなものか、そして、それはどうすれば見つけられるのでしょうか?

30〜40代のミドル世代に強まる危機感

今、世の中が大きく変化する中で、人生に行き詰まるビジネスパーソンが増えています。

もうスタックしている(人生に行き詰まりを感じている)のではないでしょうか。

特に30~40代の中間管理職の人たちは微妙な年齢で、上の50~60代と違って「逃げ切り世代」でもないし、新しい時代にキャッチアップできている若者でもない。だからしんどいんですよね。

これまでやってきた10~20年の社会人生活のやり方は効かないぞ、と。その意味で、一番危機感があるんじゃないかなと思います。今、キャリアの中でめちゃくちゃ伸びているっていう30~40代って、たぶん3%ぐらいしかいないと思う。

そういう中で1回リセットというか、本来の自分ってなんなのかって、立ち止まって考えることが必要になっています。

なぜ、新しい時代へのキャッチアップや若い世代とのコラボレーションではなく、自分の内面に焦点を当てる必要があるのでしょうか?

それは、だってスタックしているから。無理になにか頑張ったからって売り上げが伸びるわけでもないし、そもそも面白くないんですよ。面白くなくってお金もないんだから、日本企業のサラリーマンはエンゲージメント(会社との深い関わり合い)が低くなりますよね。

じゃあ、新しくAIとか、ディープラーニング(深層学習)の勉強会に参加しようといったところで、興味もない。そうすると、それ以前に「そもそも仕事って必要なの?」とか、「そもそもそんなふうに生きたかったの?」って考え始めてしまう。

「お金が入るか、面白いか」しかないんだから、仕事なんて。だったら、少しでも面白いほうがいいよね。そのためには、自分の「天才性」を生きることが大事なんです。

時間を無限大にする生き方

その「天才性」とはなんですか?

「天才」というと、アインシュタインとか大谷翔平とかを思い浮かべますが、彼らは「天才性」を生きた結果、才能を発揮しているんです。

もともと「ジーニアス(天才)」という言葉は、「霊性」を意味する「ギニウス」っていうラテン語から来ている。霊性とは、その人本来のあり方です。

つまり、「天才性」とは、個人が生まれたときに授かっている特性のことです。そして、それに忠実に生きること、固有で自然な振る舞いにあることを「天才性を生きる」と言っています。

人間は突き詰めれば素粒子でできているんですね。その素粒子が別の粒子とぶつかってエネルギーが生じて、「知覚」が生まれます。その知覚する主体のことを「意識」と呼びますが、天才性を生きている人は、意識がものすごい速さで動いているから、年を取りづらい。

「天才性を生きると、意識の動きが速くなる」……?

物理的に説明するとこんな感じですが、文系的に説明すると、「ワクワクして生きている」ということ。

そして、そういう人にとっては、時間はもう無限だということ。それこそアインシュタインの相対性理論になりますが、時間という概念は相対的で、時計は万人に同じように進むけれど、人生の過ごし方によって流れている時間は違うんですよ。

それでは、そんなに好きではない仕事の中にも、やりがいや楽しみを見いだしながら働いている人は、「天才性を生きている」と言えますか?

自分が「なにをやるか(What)」ではなくて、「どうやるか(How)」ということによって、自分の振る舞いは変わってくる。つまり、だれとどんなやり方でやるか、によって仕事は楽しくなる。

だから、なにをやっても楽しくできる、その状態に自分を持っていける人は、「天才性が強い」ということだと思いますね。

「人生の棚卸し」で自分を再発見

自分の天才性を見つけるには、どうすればいいのでしょうか?

3つのステップがあります。まずは「トゲ抜き」といって、これまで生きてきた中でこびりついてしまった固定観念や、偏った自己認識を取り除きます。

そういう思い込みは、「あなたって臆病だよね」とか、「運動が得意じゃないよね」とか、「オタクだよね」とか、それまでまわりに言われてきたことから来ている可能性が高い。

なので、物心ついた5歳から20歳ぐらいまでの間にあったことや言われたこと、そしてそれに対する当時の感情を、一度棚卸しする作業というのがまず必要です。

自分というものがどう形成されたのかを客観的に外部化する、つまり、自分の記憶を紙の上に落としていく。

「トゲ」を思い出すのは結構つらいことですよね。

自己を振り返るのは、人が一番やりたくないことですよね。だから、これ以上はどうにも前に進めない、振り返らざるを得ないっていう境遇にならないかぎり、人は振り返らない。なので、無理に勧めることはできません。

その作業を実行するまでが難しいから、そこはみんなで集まってワークショップをするとか、カウンセリング的にやってもらう方法でもいいと思います。

私の本にも「棚卸しシート」がついているので、それをやっていくと、固定観念で自分を見ているのが分かってきます。

「トゲ抜き」をして、自分の固定観念をそぎ落とした後は?

だんだん自分の固定観念が削り取られていくと、本来の自分の向いている方向性、つまり意識が吸着する方向が見えてきます。

本ではそれを「想う」「観る」「感じる」「描く」の4つの方向に分類しています。

「想う」は人のことを思う、「観る」は社会を観察する、「感じる」は自然を感じる、「描く」は抽象的な概念や構想をつくる、のがそれぞれ得意という。

例えば、「観る」の人は、小学生のときからテストの中身よりも先生と生徒の関係とか、学校の仕組みとか、テストってどうしてあるんだろうとか、そういうことを考えていたかもしれない。

1人でずっとテントウ虫を眺めていた子は「感じる」の方向性が強いだろうし。

この時点で自分の得意なことと、適職が見えてくるのでしょうか?

仕事である必要はないんです。ただ、「人の気持ちに楽にフォーカスできる」とか「抽象的な概念がパッと分かる」とか、そういう意識の仕方が自然にできるので、仕事に活かしやすい、というだけなんですよ。

なるほど。そして、本来の自分の方向性が見えた後は?

天才性に基づいて人生を「リデザイン(再設計)」します。

自分にとって自然なやり方を見つけると、人との距離感をどう取るのか、あるいは自分にとって、どこでだれと住むのが快適なのか、仕事ではどんな機能を提供し、価値貢献をするのか、解像度を増して肉づけしていく。

例えば、自然を感じて生きていきたいという人はそういうものを重視して、屋久島でロハス的な生き方をすればいいわけで、「GAFA」で働こうというのがちょっと無理な話なんですよ。

みんなすぐに「転職だ!」となるけれど、無茶言うなと。まずちゃんと5歳まで戻って人生の棚卸しをしながら、自分の意識がいい振る舞いをする状態にアジャストしていかないと。それをしないと「Midlife Crisis(中年の危機)」に陥るんです。

アメリカの世界的IT企業Alphabet、Amazon、Meta、Appleの総称

自分を知ると、チームにも優しくなれる

ちなみに、山口さんの天才性はどのカテゴリーに属していますか?

僕は「描く」、概念処理です。

例えば、最初に携わったのがM&Aの仕事。総合職でいろんな役割がある中で、僕は概念的、俯瞰的に会社全体を抽象化して捉えるということに長けていたので、大きな会社をバーっと上から見て、なにが一番のキーポイントなのかを発見することに実力を発揮してきました。

一方で、クライアントとのネゴシエーションとかはすごく下手だったので、それはチームの中の得意な人が担当していました。

僕の本では、天才性を産業ごとに8つのポジションに分けてありますが、どんな職業でも天才性を活かすやり方はある。戦い方、つまり「How」が違うだけです。

そうすると、さまざまな仕事を一手に引き受けて、その責任を持つ中間管理職は、そういう仕事の中でも得意・不得意なタスクがあるということですよね。

そうですね。自分を深堀りしていくと、自分がなにを知らなくて、なにができないかがより分かってくる。そうやって、30代、40代はまず、「自分の小ささ」を知るべきですね。

もちろん、部下に対するメンタリングや指導は必要なんだけど、自分の方向性とか、あるいは自分の意識がこちらにブレがちとか、クセが分かれば、ほかの人たちをものすごくリスペクトしやすくなる。チーム運営がしやすくなるんです。

それに、そもそも責任なんて上司一人で取れっこないので。そういうことに気がつくというか、自分の位置づけが見えたならば、部下に、あるいは上司に、無理な要求をしたりということはなくなると思います。

期待値が低くなって、自分に対しても相手に対しても優しくなる。これってすごく大事なことです。

ライフスタイルの上に仕事を

山口さんは「お金と幸福の両方を満たす」ということを提唱されていますが、お金を生み出す仕事と、「天才性を生きる」ことのバランスはどのように考えていますか?

これから人生を、天才性を生きる方向にシフトチェンジするにも、半年~2年ぐらいかかると思うんですね。まずは、その期間を現実的に生きていられるか、という計算から始めること。

僕のワークショップでも計算するんですけど、貯金やモノを売ったお金を全部かき集めて、それを毎月の固定費で割る。

例えば、持ち金を集めたら300万円になったとして、毎月30万くらいかかるんだったら、 それで割れば10カ月。これがシフトチェンジを試せる期間になる。その後どうやって生活を成り立たせていくか、はその間に設計するんですよ。

実際には、自分の固定費をどれだけ下げられるかということから考える。みんな収入とか売り上げのことしか考えないけど、コストを下げることのほうが簡単ですから。家賃にしても日本の空家率は25%ですし、やりようはいろいろあるよ、と。

そもそも「多く稼がなきゃいけない」と考えるのが、すでに固定観念なんですね。

そう、その時点から一つ呪縛にかかっている。「月にいくら稼がなきゃ」となってくると、人生はもうなにもできなくなる。1カ月じゃなくて、1年、5年、10年と、長期で成果を上げればいいんです。

あと、固定費は限界まで下げられる。寄付が入ってきたり、米が送られてきたりという、「固定費マイナス」もあり得る。突き詰めれば、たとえ1円も入ってこなくても、生活できるように設計できるんです。

だいたいみんな、仕事の上に生活があるのが問題。仕事でメシを食うというのがあって、その上に生活とか配偶者とかが引っついている。でも、本当は仕事ありきじゃなくて、生活ありきですよね。

ライフスタイルに仕事を合わせる、と。そうすることで、どんなふうに人びとの働き方が変わっていったらいいな、と山口さんは思われますか?

日本人は働きすぎかもしれないですね(苦笑)。今、北欧の労働時間が5時間ぐらいだと思いますが、日本はまだ8時間から12時間働いている。12時間なんて、1日の半分じゃないですか。それはおかしいと思うんです。

1日のうち、睡眠時間を除いた3分の1はパートナーや家族や友人にかける時間、3分の1は自分の趣味とか成長とかにかける個人的な時間、3分の1は社会とのつながり、つまり仕事。この「3分の1ルール」を達成してほしいと思います。

これからの時代は時間の概念が変わり、いかに人生の時間を無限にすることができるかが問われるでしょう。自分の天才性を生きなければもったいない。ぜひ一度立ち止まって、人生の棚卸しをしてみてください。

ブルー・マーリン・パートナーズ株式会社 代表取締役 山口揚平
事業家・思想家。早稲田大学政治経済学部卒・東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は貨幣論、情報化社会論。1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと、30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラム事業をはじめとする複数の事業、会社を運営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。NHK「ニッポンのジレンマ」をはじめ、メディア出演多数。著書に、『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』(SBクリエイティブ)、『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社)、『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』(KADOKAWA)、『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今身につけるべきこと』(SBクリエイティブ)、『新しい時代のお金の教科書』(ちくまプリマー新書)など。

[取材・編集] 岡徳之 [構成] 山本直子 [撮影] 伊藤圭
2022/01/19

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