働き方への関心の高まりに伴い、大企業でも副業を解禁する動きが見られるようになってきました。副業を始めたい、興味があるという読者の方もいらっしゃるのでは?
そこで『”未来を変える” プロジェクト』では、「副業」をテーマに読者イベントを開催。実践者も交えて、副業に関するさまざまな観点について話し合い、大いに盛り上がりました。
そこで本記事では、副業の盛り上がりの背景、副業でこそ得られる能力、副業の選び方、本業との相乗効果などについて学べる、読者の推薦本をご紹介します。
副業を検討する際に、ぜひお手に取っていただきたい5冊です。
副業、注目の背景を知りたいなら『LIFE SHIFT』

あらためて、今なぜ「副業」に注目が集まっているのでしょうか。背景には「ライフ・シフト」と呼ばれる、これからの時代に起こる生き方・働き方の変化があります。
著者であるロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授らによれば、これからは医療やテクノロジーが発達し、人間はますます健康で長寿になる。
そんな長い人生を楽しむ上では、お金など「有形資産」だけでなく、人脈・スキルなど「無形資産」をマネジメントすることが大切という価値観が生まれてくる。
そのためには一つの会社に留まり、その会社の仕事にだけ没頭するよりも、「ポートフォリオ・ワーカー」という新たなキャリア像を目指すほうが有効だと、教授は言います。
このポートフォリオ・ワーカーが、「副業」など異なる種類の活動を同時に行う人のこと。時間やスキルを資産と捉え、金融資産のように複数のモノゴトに投資していくのです。
教授いわく、ポートフォリオ・ワーカーは非効率性と切り替えコストからは逃れられないとのこと。それを軽減するには、
- 活動同士が相乗効果を生み出すよう、共通する能力や知識を見いだす
- 活動ごとにまとまった時間を確保し、偏りなく活動間の調和を保ち続ける
が有効だそう。副業を通じて、充実した長い人生をどのように生きていくか。大きなイメージをつかむ上で最適な一冊です。
人生100年時代の働き方、将来に向けた本業以外の取り組みに関する示唆が深いです(50代・男性・公務員)
副業でこそ得られる5つの能力『組織内専門人材のキャリアと学習』

『ライフ・シフト』では、副業など異なる種類の活動を同時に行うことで、スキルという無形資産を築くことの重要性が語られていました。
では、本業だけでは得られない、副業だからこそ培うことができるスキルとはどのようなものでしょうか。
著者は、企業など組織に属し、帰属意識も有しながら専門性を持って業務を行う知識労働者のことを「ナレッジ・ブローカー(組織内専門人材)」と呼びます。
著者いわく、今後ホワイトカラーは一つの企業でしか通用しない専門性を培うだけでは不十分であり、このナレッジ・ブローカーを目指すことが重要になるそう。
ナレッジ・ブローカーを目指す上では、副業で培った能力を本業で、また本業で培った能力を副業で活かす、越境学習を行うこととなります。そうして得られるスキルが、以下の5つ。
- 専門性:専門知識の習得やフレームワークを再構築する力
- ノットワーキングスキル:初対面の相手の情報を読み取り、関係性を構築する力
- 共同体スキル:価値観の異なる人びとを横断的に受け入れ、学びの場を作る力
- 還流プロセスの経験:組織で反発を受けながらも、関係者を巻き込み説得する力
- 複数共同体基底価値観の受容:共同体間を多様な価値観に触れながら行き来する力
確かに、これらのスキルは本業だけに留まっていたのでは備えることが難しそうです。しかし、今後は個人のキャリアの可能性を広げてくれる重要なスキルのように思います。
組織外の経験を組織に還元する方法を事例やデータに基づいて実証しています(20代・男性・NPO)
副業の選び方なら『ハーバード流 キャリア・チェンジ術』

「儲かる副業の見つけ方」はこの本には書かれていません。しかし、新しい自分の可能性を発見しつつ、「これだ」と納得して取り組める副業の選び方を教えてくれます。
トップビジネススクールを教員として渡り歩く著者が考える、9つのキャリア戦略。基本的な考えは「行動しながら考える」。「考えてから行動する」ではありません。
- 戦略1:行動してから考える(キャリアの選択肢を分析しても、新しい可能性は見つけられない。新しい考え方は行動し、振り返ることで得られる)
- 戦略2:本当の自分を見つけようとするのはやめる(自分の将来像を一つではなく、複数考え、その中のいくつかのに焦点を当てて試してみよう)
- 戦略3:過渡期を受け入れる(新しいものに移行するには時間がかかる。そう割り切り、自分の行動に矛盾が生じていても、結論を無理に急がない)
- 戦略4:「小さな勝利」を積み重ねる(一気に大きく変化を遂げられる人はあまりいない。最初から正解を見つけようと、リソースを無駄にしない)
- 戦略5:まずは試してみる(本業と並行して実行すれば、いくつかの選択肢を試して比較できる。追求は本気でするが、決断は比較するまで急がない)
- 戦略6:人間関係を変える(あんなふうになりたいと思える人、キャリア・チェンジを手助けしてくれる人を、それまでの人間関係から探してはいけない)
- 戦略7:キャリア・チェンジのきっかけを待たない(自分にとって決定的瞬間を待ってはいけない。今経験している変化の中に意味を見いだそう)
- 戦略8:距離をおいて考える。だが、その時間が長すぎてはいけない(思い詰めたら、その状況から離れてみる。現実と前向きに向き合い、影響を受けるしかない)
- 戦略9:チャンスの扉をつかむ(新しい人や仕事との出会い、人生の節目を、一歩踏み出すための絶好の機会と捉えて行動に移そう)
この9つの戦略を念頭に、考えられる副業の選択肢を見つめ直してみると、不確実な自分の将来、副業で拓けるキャリアの可能性をより前向きに捉えられるようになるでしょう。
本業との相乗効果を生み出したいなら『ソーシャル物理学』

『ライフ・シフト』には、本業、副業など複数の活動間の相乗効果を生み出すことの重要性が書かれていました。もう少し具体的に深掘りしてみましょう。
本著の著者であるMITのアレックス・ペントランド教授によると、クリエイティブな集団には3つのパターンがあるそうです。
- アイデアの量:たくさんのアイデアが多くの人から寄せられる
- 交流の密度:意見に対する肯定/否定のコンセンサスが即行われる
- アイデアの多様性:参加者が全員同じような頻度で意見を表明する
そして、集団がそのような状態を作り、クリエイティビティーを高めるには次の2つの要素が必要だそうです。
- 探求:新しいアイデアを探すプロセスのこと。集団内部だけでなく、多様な人びとで形成される外部のソーシャルネットワークでの交流を通じてアイデアを取り入れているグループのほうが、より革新的なアイデアを生み出す傾向にある。
- エンゲージメント:仲間同士のグループ内で発生し、行動規範そのものや、その遵守を求める社会的圧力の形成へとつながっていく社会的な学習のこと。メンバー間のアイデアの流れが活発的なグループのほうが生産性は高くなる傾向にある。
外部の人と接する機会が多いのは、本業よりも副業でしょう。だとすれば、多様なソーシャルネットワークを形成しやすい副業を選び、そこで探求して得た能力や知識を本業でのエンゲージメントに活かすというのは、一つの型にできそうです。
自分で自分の人生を決めるマインドセットを知るなら『採用基準』

副業をするということは、自分の人生やキャリアを会社に委ねるのではなく、自分の頭で考え、自分の手で切り拓いていくということです。
著者いわく、そのために必要なのが「リーダーシップ」。タイトルからしてマッキンゼーの採用基準に関する本かと思いきや、本著の内容の半分以上はリーダーシップに関わるものです。
日本では、このリーダーシップの概念が正しく理解されていないと著者は嘆きます。何も「世の中を変えたい」といった大きなものだけではない。
リーダーシップとは、自分の人生をどう生きたいか、自分で決めて動くこと。「やりたいことなんてない」と行動しない自分を正当化したりしないこと。
そのために、「この目標、やりたいことは、本当に自分で決めたものなのか?」と自問し、もしそうでないのなら、リーダーシップのある人の近くにいて自分を変えるべきとのこと。
副業は、実はリーダーシップを磨く機会でもあるのです。
「副業」を検討するなら読んでおきたい、本サイト読者からの推薦本いかがでしたか? 気になったものから、ぜひお手に取ってみてください。
【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
・不確実性と直観に学ぶ、これからの仕事選び
「キャリア」に変化が押し寄せている今、仕事を選ぶための「軸」をご紹介します。
[文] 岡徳之
「いいね!」していただくと、
最新記事をお届けします。