可能性があふれる時代だからこそ、「ありたい姿」から考える―澤円さん

2019/12/04
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PROFILE
澤円さん
株式会社圓窓 代表取締役

株式会社圓窓 代表取締役、外資系大手IT企業 業務執行役員、琉球大学 客員教授。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年に大手外資系IT企業へ転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントを行うようになる。直属の部下のマネジメントだけではなく、社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を獲得。2015年よりサイバー犯罪に関する対応チームにも参加。2019年10月10日より、株式会社圓窓 代表取締役就任。企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動中。
Twitter:MADOKA SAWA / 澤 円(@madoka510

「自分の“ありたい姿”に結びつかないのなら、今の肩書きは失っても構わないと思っています――」。自身の事業では複数社のスタートアップでのメンターや大学客員教授などを務め、外資系大手IT企業の役員としても活躍する澤円さん。そのキャリアが華麗に映る人も多いはずですが、インタビューの席では意外に思えるほど、ご自身の立場に固執しない澤さんの姿を目の当たりにしました。キャリアの原点にあるのは挫折から始まった社会人生活の記憶と、インターネット時代の幕開けに真っ先に飛び込んでいった知的好奇心。現在の澤さんを形作った原体験を語っていただきます。

株式会社圓窓 代表取締役 澤円さん キャリアストーリー

自分の「ありたい姿」に結びつかないのなら、肩書きを失っても構わない

「澤さんってすごいキャリアですよね」と言ってくれる人がいます。

今回のインタビューのきっかけもそんなイメージからだったのかもしれません。でも僕自身は、キャリアという意味では自分がすごいなんて思ったことがないんです。どちらかというと僕は、中途半端なところから中途半端なところへと歩んできたような気がします。

自分のキャリア観は、ここ数年でようやく言葉にできるようになってきました。それが「ビーイング」というキーワード。「こうありたい」と思う自分にたどり着くことが大切なのだと。

やりたいことや好きなことに時間を割いて、お金も費やして、その結果として誰かの役に立つ――。それが僕の目指す姿であり、自分がハッピーでいられる状態です。

世間一般で「すごい」と言われるような一流の学歴とか、一部上場企業といったステータスはどうでもいい。ありたい自分の姿にたどり着かなければ、ハッピーにはなれないと思うのです。

今、僕は自身の会社の代表を務めていて、外資系大手IT企業の業務執行役員という肩書きもありますが、自分のありたい姿に結びつかないのなら、失っても構わないと思っています。

組織改編などのタイミングで一気に吹き飛ぶこともあるのに、この手の肩書きに命をかけるような勢いでしがみついている人もいますよね。思い起こせば僕は、前の会社に就職した20代の頃から、そんな姿を滑稽だと思って眺めていました。

株式会社圓窓 代表取締役 澤円さん

裏腹な形で実現した「周りとは違う独特な人間になりたい」という思い

僕のキャリアにおいてラッキーだったと感じるきっかけが2つあります。

1つは、高校時代のアメリカでのホームステイ。現地の生活では、それまで自分がとらわれていた偏差値や進学といった狭い視野では語れない、別次元の世界が待っていました。

アメリカで出会った人たちは「ユニークであることがかっこいいんだ」という信念で生きていたんです。その姿に影響された僕は、偏差値や進学で一番を目指すのではなく、「周りと同じではない自分」「独特だと思われている自分」を目指すようになりました。アメリカの人々の自由な考え方が性に合っていたのかもしれません。

もう1つのきっかけは、就職の際にプログラマーという職業を選んだことです。それまではプログラミングのプの字も知らない文系学生だったのに。

アメリカを体験した僕は、周りとは違う独特な人間になることを夢見ていました。当時から、会社名や肩書きでプライドを保つような生き方はしたくないと考えていました。母校の立教大学は大好きですが、学歴では勝てない相手だって社会にはたくさんいます。

だから「手に職をつけなきゃいけない」と考えたのです。

そうしてプログラマーとして歩み始めたのが1992(平成4)年のこと。技術的バックグラウンドが何もない文系出身の僕は、当然ながら多大な苦労を強いられることになりました。

周りとは違う独特な人間になりたいという思いは、「同期と比較しても技術や知識が足りないポンコツエンジニアの澤」として認知されるという、なんとも裏腹な形で実現してしまったのです。

社会人になってからの1〜2年、僕はずっと悶々とした日々を送っていました。

株式会社圓窓 代表取締役 澤円さん

みんなよりも一歩先に行きたい。インターネットならそれができるはず

「ポンコツエンジニアの澤」を救ってくれたのは、インターネット時代の到来でした。

それまで会社で使っていた汎用機には、ワクワクする要素なんてほとんどありませんでした。でもWindowsで動くようになると、文字通りの窓を出して、ゲームなども楽しめるようになったんです。これが面白くて、いろいろと触っているうちに、あの「Windows 95」が登場しました。

やがて会社全体でWindows 95を使うことになり、僕はその設定を命じられました。

「何だこれ? ブラウザ……?」

それがインターネットとの出会い。元来の新しもの好きだった僕は「世界とつながれる」ことに強く興味を持ち始めました。面白そうな雑誌も片っ端から読みました。

そうこうするうちに、雑誌の広告で「ゲートウェイ2000」という通販専門のメーカーから最新機種が買えることを知りました。それまでは実家に兄が持っていたパソコンがあったくらいで(当時としてはそれもかなり珍しかったことですが)、自分のパソコンを買うなんて想定もしていません。でもその広告を見た瞬間に、「自分のパソコンでインターネットとつながりたい」という思いを抑えられなくなってしまいました。

その頃の僕は会社の寮に住んでいて、僕より仕事ができる同期も何人も暮らしていたのですが、寮内で自分のパソコンを持っている人間はいませんでした。「今パソコンを買えば、この寮で最初にインターネットにつないだ存在になれるぞ……!」という考えもありましたね。

みんなよりも一歩先に行きたい。インターネットならそれができるはずだ、と。

当時の値段で40万円くらいはしたと思います。僕の安月給からすると大変な贅沢品です。それでもすぐに広告の電話番号へかけて、ローンを組んで注文しました。届いたタワー型のパソコンとモニターは、腰をやられるんじゃないかと思うほどの重さだったことを覚えています。

回線もいちばん早いやつを契約しました。そうして初めてモデムを挿したときの「ピー、ギャー」という音も忘れられません。

会社では嫌になるほどパソコンを触っているはずなのに、部屋に帰ってからもまた、ひたすらパソコンを触っていました。いろいろな人とつながるのが、とにかく楽しかったんです。

やがて僕の社内での立場も変化し始めました。

インターネットがもたらしたのは「ゲームリセット」。全人類共通の、壮大なゲームリセットです。それまでの技術的バックグラウンドに関わらず、みんなが初心者としてインターネットと向き合うことになりました。

そのタイミングでたまたまエンジニアだった僕は人材としての価値が変わり、インターネット時代の黎明期に「素人として詳しい」という立ち位置を確保できたわけです。

株式会社圓窓 代表取締役 澤円さん

複雑化した可能性から選ぶ「キュレーションの時代」

新しもの好きで、新しいものに触れていたいという思いのままに直感で動いた僕は、「好きこそものの上手なれ」を地で行くように勉強もしました。慣れない英語の一次情報に接し、海外の最新の知見も取り入れていました。

インターネットのおかげで、周りの人が知らない知識を得ることもできました。紙の参考書とは違い、ネットの情報は日々アップデートされていきます。紙で勉強した情報はアップデートされないけど、ネットの情報は日々変わっていく。その感覚値を持っている人はいなかったので、周りとの差は圧倒的に開いていきました。

会社に行くと「あ、この人はこれを知らないんだ」という発見が毎日のようにありましたね。

当時から僕を支えているのは知的好奇心です。これがないと生き延びられない世の中だと思います。2019年の今は、当時と比べてもはるかに。

昔は常に新しいものを探していたのですが、今は探すというよりも、選ばなければいけない 「キュレーションの時代」なのでしょう。だからこそ冒頭で述べたように「ありたい自分」を思い描き、目指すことが大切だと思うんです。

AIやブロックチェーンは、かつてのインターネットに匹敵するような「全人類共通のゲームリセット」の可能性を秘めています。同時にその可能性は複雑化していて、自分の未来を何か一つにすべてベットするなんて、なかなかできそうもありません。

自分のありたい姿を定義し、その視点から世の中にあふれる情報を見たときに、何を選ぶべきなのか? そんな考え方がこれからのキャリアにつながっていくのではないでしょうか。

後編はこちら

[編集・取材・文] 多田慎介 [撮影] 稲田礼子
2019/12/04

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